11Apr

最近はマジシャンではなく、メンタリストという言葉を使う事もありますが、コインが消えたりカードが思わぬところから出てくるのは、ご承知の通り、魔術でもホラーでもなくあくまでマジックです。
では、マジシャンたちは、どのようにトリックを隠して観客を導いているのでしょうか。
実はマジシャンたちは、心理学のテクニックを利用して、嘘ではないギリギリのラインで観客にマジックを見せているのです。
この、意外とも思える、マジックと心理学の関係について、今回はお話します。
ミスディレクション
人間の脳は、目の前にあるものすべてを見ているようで、実は大切だと思うものだけを記憶するようにできています。そんな脳のカラクリを利用して、マジシャンはトリックを隠しています。
マジックショーなどを見ていると、マジシャンは「ここに注目してください」という言葉やしぐさをよくします。そうすることで、全部を見ているようで、実は注目を促された部分だけを注視して、他の部分はおろそかになります。そのスキにトリックを隠すのです。このように、注意をそらすことで、見てほしくない部分を見せないように手法を、「ミスディレクション」と言います。
秘密のカラクリでどれだけ観客をおどろかせるかは、いかに注意を外せるかにかかっているため、よほどうまくやらないと、すべてが台無しです。
ミスディレクションと嘘
このように、注意をそらせることで、知られたくない部分を隠すって、「つまりは嘘ついているんでしょう?」と言いたくなります。
しかし、注目すべきは、本当の事を”言わなかった”だけで、あとは見ている観客が勝手に想像で不足部分を埋めており、事実以外の事は何も言っていない、つまり嘘ではないという事です。
誰でもウソをついたことの一度や二度はあると思いますが、ウソはウソの上塗りをせねばならず、後味の悪いものになりがちですよね。
そこで使えるのが、このミスディレクションの手法です。
例えば、浮気しているAさんの奥さんから、「うちの主人、浮気しているって話、聞いたことない?」と聞かれたとします。この時「してませんよ」というとウソになりますが、「この間、家族が一番大事って言ってましたけどね・・・」と、全く違う話をして、後の穴埋めを奥様の想像で補ってもらうように促すと、ウソはついていない、意識をそらせて本当の事を言わなかっただけ、という事になります。
最後に
マジシャンが、カードを予想外のところから出して、「これは魔術です!」と言うとウソになりますが、ミスディレクションを使う事で、ウソではないギリギリを見せる事が、マジックのエンターテイメント力なんですね。
ミスディレクションは、日常でも使える手法ですが、やはり、ウソではなくても信頼性はギリギリアウトでもあります。やむを得ない事情の時だけ使いましょうね。