6Nov

人は期待されると期待に応えようという気持ちになるものです。スポーツや学業で指導者から期待していると言われたらきっと嬉しい気持ちになるでしょうし、それに応えようと頑張るでしょう。
また、期待していると言われてなかったとしても、そうすることが望まれていると理解できたら、応えようとするするものです。
今回ご紹介するホーソン効果は、そんな人の期待に関する心理学の用語です。
目次
ホーソン効果とは
ホーソン効果とは、医療の現場などで、信頼している医者の治療行為に応えようとして、何かしらのアクションを起こして結果的に症状が改善される現象のことです。
医者は自分のために一生懸命治療してくれています。信頼している先生相手だったら、病気が治らないことが申し訳なく感じることもあるでしょう。医者が忙しそうにしていたら、負担を軽くしたいと考えてしまう人もいるかもしれません。そういった気持ちが症状に影響するわけです。
早く治したいという気持ちから、細かいことに目がいくようになり生活習慣が改善されて症状が改善されるということもありえるかもしれません。また、プラシーボ効果のような感じで、良くなったように感じることもあるでしょう。
ホーソン効果は、期待に応える気持ちが人に影響するということを表しているわけですね。
ホーソン実験
ホーソン効果には、その名前の元となった実験があります。その実験の名前をホーソン実験と言います。
ホーソン実験は工場での作業能率の向上の原因は何か調べるために行われたものです。照明や、賃金、休憩時間、部屋の温度など様々な条件が変更されました。
結果はなんと、何をしても作業能率が元より上がったのです。
照明は明るくしても作業能率が上がりましたし、暗くしても作業能率が上がりました。その他の条件も、変更すれば作業能率が上がったのです。それどころか、作業の条件を変えた後で、元の条件に戻したとしても、また作業能率が上がったのでした。
実験には監督者がいましたので、恐らく環境の変化よりも、監督者がいることが作業を向上させる原因になったのではないでしょうか。また、時が経つにつれて熟練していったという可能性もあると思います。
作業の能率のいい環境は大切ですが、環境だけではなく、人に見られていることと、期待に応えようとする気持ちが、作業能率には大切であるということがわかりました。
会社やスポーツクラブでチームとしてよりよい結果を出すためには、環境の細かい変化ではなく、上司や指導者との信頼関係、期待に応えたくなるような人間関係の構築が大切だと思われます。
教育現場でも同じです。この先生は信頼できる、この先生なら言うことを聞く気になると思ってもらえれば、生徒の生活態度や学業成績は向上すると考えられます。指導者や教師は高い能力に加えて、うまいコミュニケーションが求められているわけです。
人というものは、人の影響をとても受けるということがよくわかりますね。
まとめ
ホーソン効果とは、主に医学の現場で、医者の期待に応えようとして、症状が良くなる、または良くなった気になるという現象を現した心理学用語です。人に見られているということ、人の期待に応えようとすることは、自分自身の体調や作業能率に大きく影響を与えるのだというお話なのでした。
気持ちの落ち込み
人は誰でも気分が落ち込むことがあります。
人間関係、仕事関係、家庭状況など、原因は様々です。
休養したり、気分転換をして、時間が経つにつれて次第に気分が収まってくるという経験は、みなさんしたことがあると思います。
しかし、この「気分の落ち込み」が自分でも調整ができず、どんどんと深くおちこんでいってしまうことがあります。
その状態が続いた結果、心身に支障をきたし、うつ病になることがあります。
現代の社会でも、病院でうつ病と診断され、会社や学校に行けなくなってしまう事例も増えてきています。
いつ私たちがうつ病になってもおかしくありません。
ここではうつ病の原因と対策について考えていきたいと思います。
うつ病の原因
うつ病の原因はまだ不明な点が多いとされていますが、様々な要因が重なり合って発症すると言われています。
うつ病の主な特徴として、3つの症状が考えられます。
・喜びが感じられない(喜びの喪失)
・何もやる気がおきない(意欲の喪失)
・何も考えられない(思考力の低下、悲観的になる)
そして身体面にも影響が現れてきます。
・頭痛、腰痛、肩こりなど
・食欲不振、胃の不調など
・息苦しさ、発汗など
生活環境などの要因が重なりあうと、一気に症状が悪化するケースもあります。
うつ病の前兆
うつ病という言葉を聞いたことのある方は多いかもしれませんが、自身がうつ病だと自覚できる人は少ないかもしれません。
うつ病の前兆としての主な特徴です。
・体がつかれやすく、食欲がない
・騒音などが以前より煩わしく感じる
・息苦しくなるときがある
・仕事に対して意欲がわかない
・以前楽しんでいたことが最近楽しくない
・人と接することが億劫である
日常的に気づくことは難しいかもしれません。しかしうつ病は発見が遅れると、病状はどんどん進行していきます。
日頃からの少しの意識で、発見できる場合もあります。
うつ病の対策(受診する場合)
うつ病の治療としては、専門のカウンセリングや薬物療法に合わせて、自身も十分な休養をとりながら治療していきます。
主に受診する科は心療内科や精神科ですが、症状によっては神経科で治療する場合もあります。
最初は心療内科で受診を受けるケースが多いようです。
治療期間は様々ですが、発見が遅れるとその分長引く傾向にあるようです。
うつ病の対策(受診しない場合)
受診をする前に自宅で療養しながら様子を見たい方もいると思います。
自宅で過ごすにあたっての気をつけたい箇所を述べたいと思います。
・環境を整える(人間関係、生活環境など)
・心を整える(早く治したいという焦りを抑える)
・可能な限り、時間を休養にあてる
・周囲に理解をお願いする(家事、仕事などから離れる)
・適度な運動を取り入れ、気分転換を意識する
うつ病において休養は大切なポイントだと言われています。
生活環境を整えることで、改善するケースも多いようです。
うつ病は周囲も気づきにくい病気です。
場合によっては怠けているように見える時もあるかもしれません。
しかしそこで相手を責めてしまうと、症状がどんどんひどくなります。
少しでも気になる箇所を発見した場合、気をつけて観察してあげましょう。
現代において、うつ病は10~15人にひとりは経験すると考えられ、男性よりも女性のほうがうつ病になりやすいと言われています。
決して他人事だと思わず、気づいた時には手を差し伸べてあげることが大切です。
その行動によって、相手が救われる時もあるでしょう。
身体醜形障害(Body dysmorphic disorder:BDD)とは
自身の外見や容姿を醜いと思い込んでしまう精神疾患のことです。
醜形恐怖症また醜貌恐怖症とも呼称されます。
身体醜形障害の症状
身体醜形障害の発症者は自身が醜いと思い込んでしまいますが、あくまで思い込みでしかなく、実際にはそうではないことも多々あります。誰の目から見ても美しいと思われるような容姿の持ち主であっても何故か醜さを信じきっていることすらあり、大抵の場合、他者からすれば気にも留めないような部分に発症者は拘泥してしまいます。
顔、髪、肌等の人の目に付きやすい部分に不安を抱くことが多いですが、個々人によって拘泥する部分は異なり、体型や筋肉量、果ては性器や乳房のような部分にまで不安を感じていることもあります。発症者が男性の場合は顔、女性の場合は身体全体に不安を抱えていることが多いそうです。また自身の身体の造形対してだけではなく、ニキビやしわ、たるみ、体毛の有無や具合などを気にすることもあります。
そしてこのような不安に苛まれる時間は不安の増大と共に伸び続けていき、最終的には1日中不安に支配されるようになってしまうのです。
不安に支配された身体醜形障害の発症者は鏡などの反射物を見ることで自身の姿の確認することをやめることができなくなったり、あるいは逆に反射物を執拗に避けたりします。
外出時には他人の視線が気になり、常に自身の外見に気を配り、精神を磨り減らし、遂には外出することすら出来なくなりひきこもりになってしまうことも多いです。他にも写真を撮られることも猛烈に拒否する、不要な整形手術を繰り返すなどの行動をとります。
また常に不安に苛まれるためパニック発作や情緒不安定に陥りやすく、日常生活、殊に仕事に支障がでるケースも多くみられます。
そしてこれらの不安の蓄積や強迫観念によりうつ病や対人恐怖症、摂食障害を併発する可能性も高く、統合失調症の発端となってしまうこともあります。
更に家族巻き込み型の身体醜形障害の発症者は家族から自身の容姿に対して思うような返答が得られない場合、暴力的な行動をとることがあり、非常に危険であると言えます。
身体醜形障害を引き起こす原因
ストレスによる異常に低い自己評価が原因です。
第二次性徴に伴い10代で発症する人が多く、思春期の特有の自身に対して抱く不安がストレスとなり発症を助長してしまうようです。この場合重篤化してしまうと自傷や自殺行為に及ぶことが多々あるので注意が必要です。
また生来の性格に起因するところが大きいと見られており、殊に完璧主義で上昇志向な人は身体醜形障害を発症する可能性が高いと見られています。
身体醜形障害の治療
身体醜形障害は発症者一人での克服は難しいとされているようです。
したがって「あるがままでいい」の精神を説く森田療法や暴露反応妨害法(ERP)、抗うつ剤などを使用する薬物療法が治療法として挙げられます。
身体醜形障害の人には「醜くなんかない」という説得はむしろ逆効果であり、ただでさえ周囲に理解や共感を得にくい病で孤独を感じている発症者が、自身を理解してくれないことに心を閉ざしてしまう危険性があるためです。
治療は専門の医師に一任すべきでしょう。
身体醜形障害のまとめ
身体醜形障害とは実際には醜くなどなくとも自身の外見や容姿を醜いと思い込んでしまう精神疾患のことです。
ストレスによる異常に低い自己評価が原因であり、重篤化してしまうとほかの精神疾患や暴力行為や自傷、自殺行為に走る危険性も孕んでいます。
治療には森田療法や暴露反応妨害法(ERP)、薬物療法が挙げられます。
身体醜形障害の予防、克服には森田療法の「あるがままでいい」の精神が大切であると言えるでしょう。
ただし間違った説得をしてしまうと症状が悪化してしまうことがあるため注意が必要です。